昨年上場を果たしましたアヤラREIT:AREIT(HP)ですが、Laguna Technopark(ラグーナテクノパーク)の土地を2021年1月に取得したというプレスリリースが出されました。
なお、当REITは2020年8月に株価:₱27で売り出されました。
私は、お客様に助けて頂きIPOにて取得することが出来ました。REITは配当利回りも魅力的なので、暫くは保有していきたいと考えています。
株価は、その後₱25前後で横ばいが続きフィリピンの経済回復傾向に同調する形で2021年1月現在は₱30前後で推移しています。
日本でもREITという商品の認知には時間を要しました。
今年は、ダブルドラゴン、ロビンソンと言った他社REITも上場予定ですので色々なアセットタイプの商品が提供され市場が賑わうと共に不動産市場の透明化にも貢献してもらいたいです。
さて、今回の物件取得について記事を書きたいと思ったのはAREIT初の土地の所有となるからです。
IPOで取得した物件とセブ・パシッグで取得した案件は全て借地(所有者:アヤラ)であることから、将来的に土地価格が上昇していく果実をこのREITが享受する利点を受けられないこととなります。
日本のREITでスポンサーが底地人(土地所有者)として残している物件は無いかと思います。
フィリピンREIT物件は借地が標準となってしまうと、投資家への魅力が薄れてしまうのではないかと危惧しています。
今後上場してくるREITの動向もウォッチしていきたいと考えています。
では、取引内容について公式HP等に出ている情報を元に確認していきたいと思います。
(公式開示資料はこちら)
物件名:Laguna Technopark(ラグーナテクノパーク)
(出典:グーグルマップ)
所在地:North Science Avenue, Laguna Technopark, Biñan, 4024 Laguna
売主:Technopark Land, Inc. (TLI)
買主:AREIT
取得日:2021年1月5日
土地面積:98,179㎡(29,699.14坪)
価格:11億ペソ(約23億76百万円)
単価:11,204ペソ/㎡(約8万円/坪)
賃貸収入(地代):Integrated Micro-Electronics, Inc. (HP)に2005年から賃貸されており、2027年12月31日までで、毎年5%の増額改定条項あり。契約満了時に更新の可能性あり。
以上、公表されているデータはほぼ全てです。
最も重要な賃料が幾らなのか、利回り何%で取得したのかという情報開示がありません。
JREITも初期は開示情報が少なかったですが、これだけではREITにとって良い取引なのか、分かりません。
続いて取引背景にについて更に見ていきたいと思いますが、結論としては全てアヤラグループ内での内部取引という感じです。
まず、売主のTechnopark Land, Inc. (TLI):HPは、アヤラと資本関係にある三菱商事との共同開発にて1989年に作られた工業団地(470ヘクタール)であり、三菱商事が積極的に日系企業へ営業をしていたことことからか、パナソニックや富士通と言った大企業が入居しています。なお、1990年から入居していたHONDAは2020年3月に撤退を表明しており、既に閉鎖しているものと思われます(テクノパークHPには残っています。)
取引価格について、単価:11,204ペソ/㎡となっておりますが、当該地のZonal Value(日本でいう固定資産税評価額)が9,350ペソ/㎡(2019年時点)となっている事を考えると、更地としては妥当あるいは割安な水準かと思いますが、期限の定めが有るといえど借地がありますので、底地としてはもう少し安く売ってくれても良かったのではないかと感じます。
続いてテナントですが、今回購入した土地の上には建物が建っています。つまり、底地を購入したという事です。
その建物所有者は、Integrated Micro-Electronics, Inc.で「車載用、産業用電子機器、航空宇宙市場などの長寿命製品ライフサイクル向けの高信頼性と高品質の電子機器」を製造していますが、アヤラコーポレーションの100%子会社です。
以上の事から、ポジティブに考えるのであれば法人破産・賃料滞納と言ったリスクは少ないと言えますが、契約満了時に更新するのか、その更新条件についてどうするのかと言った点は、全て親が決めるという事となるでしょう。
なお地代については開示されておりませんが、ヒントとしてJETROより2015年に発行された工業団地案内資料の当テクノパークの倉庫代を載せておきます。
(出典:JETRO)
地代について推測してみたいと思いますが、仮に利回りが5%だとすると地代は46ペソ/㎡と上記倉庫賃料(200ペソ/㎡)の23%という感じです。
毎年5%の地代改定条項がありますので、2027年には6.9%まで上昇します。
フィリピンの場合、賃料の上昇(利回り増加)よりも価格の上昇の方が魅力的ですので、今後も積極的に土地所有権案件を増やしていって欲しい願っています。
仲田リアルエステート
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