コロナウィルスの影響_日本のホテル稼働率&客室単価_その1

新型コロナウィルスの影響でホテル業界が大変であると報道されていますが、実際にどの程度の稼働率・客室単価(1部屋当たりの販売価格)となっているのか、J-REITが保有のホテルデータ(2020年2月まで) から確認していきたいと思います。。

さて、現在フィリピンでは第1号REIT上場に向けて証券取引所が準備を進めていました(最新の記事はこちらを参照)が、1か月間に渡るマニラ閉鎖によりさらに遅れるものと思います。更には、フィリピンの株価が暴落していますので審査が完了しても上場のタイミングを調整せざるを得ないでしょう。

私が、フィリピンにおいてREITの上場を期待している理由の一つとして、今から見ていきます不動産(今回の例ではホテル)の稼働率・客室単価といった不動産価格に大きく影響を与える重要な数値が公表されるようになるからです(フィリピンにおいてはどこまで公表されるかは定かではありませんが)。

これらのデータが公表されることで、オフィス&住宅であれば賃料水準がどの程度であるのか、また上昇傾向にあるのか、経費率はどの程度であるのかといった実際の数値を把握することが出来、結果フィリピンにおける不動産情報の透明性が上がり不動産投資のリスク把握に寄与することが期待出来ます。

さて各ホテルの数字を見る前にマクロ的な数値の確認となりますが、2020年2月の訪日外国人客数は108.5万人と前年同月260万人から152万人減少 (増減率▲58%) しています。国別では、韓国が▲64万人(増減率▲88%)、中国が▲51万人 (増減率▲80%)であり、3月は更なる落ち込みとなる事が確実視されています。

出典:JNTO

では、ホテルの稼働率・客室単価を見ていきましょう。参照は、ジャパン・ホテルREIT、インヴィンシブルREIT、いちごホテルREITの公表数値で、各地域ごとに3ホテルを選び、2019年1月・2月と2020年1月・2月とを対比する形で稼働率、1日当たりの平均客室単価並びに販売可能客室当たりの売上(稼働率×客室単価で求められる1室あたりの売上)グラフを作成しました。

なお、1つ注意点として中国の春節(旧正月)は今年1月24日~30日でしたが、昨年は2月4日~10日と月が異なることを挙げておきます。

まず札幌ですが、2月は札幌雪祭りが開催されることからホテル需要の高いシーズンとなります。

  2019年/2020年 2月   稼働率    客室単価
イビススタイルズ札幌  86.8%→64.4% 16,216円→13,514円
メルキュールホテル札幌 85.1% →64.4% 16,811円 →10,274円
ネストホテル札幌大通   97%→93%  19,290円→11,142円

イビススタイルズとメルキュールは、フランスのアコーホテルズグループです。

2020年1月まではコロナウィルスの影響はほとんど無い事が分かります。しかし、2月になると稼働率が一気に下がります。ネストホテル札幌の稼働率はほとんど下がっていませんが、客室単価を大幅に下げて稼働率確保に動いたのかもしれません。しかし、結果として同ホテルの1室あたりの売上(RevPar)は前年同月比で55%まで下がっています。

続いて、京都を見ていきましょう。

2019年/2020年 2月          稼働率    客室単価
イビススタイルズ 京都ステーション  86.2%→55.8% 8,280円→7,557円
ホテルマイステイズ京都四条      90%→55%   6,364円→6,347円
スマイルホテル京都四条        100%→96%  5,796円→4,445円

外国人観光客が減り、かつての厳かな京都を取り戻したというコメントがニュース等で流れていましたが、ホテルの稼働率を見てもそれを実感できる数字となっています。

上記3ホテルはビジネスホテルであり、また2月の需要の少ない季節ですので客室単価は元々高くない事から2020年2月の下落は大きくないですが、イビススタイルズ京都ステーションとホテルマイステイズの稼働率の落ち込みは大きい事が分かります。

3月は桜&春休みシーズンと言えど、日本人の旅行者も激減している中でどのような稼働率・客室単価となってしまうのか、とても不安視しています。

実際、ホテルREITの代表格であるジャパン・ホテル・リート投資法人は3月25日に 「2020 年 12 月期(第 21 期)の運用状況及び分配金の予想の修正に関するお知らせ」 を出し、 . 2020年12月期通期 の分配金予想を当初の「3,750円」から新型コロナウイルスの問題が与えるホテル収益への影響を見積もることが困難なため、収益予想の算定を行うことができず、「未定」と修正しています。

また当報告書で 「本日現在、変動賃料等導入20ホテル合計の3月度のRevPARは、全国的なイベントの自粛や大 型テーマパークの営業中止、さらには諸外国による日本への渡航制限やわが国における海外からの入国制 限対象国の拡大等の影響を大きく受け、前年同月比70%弱減少する可能性があると考えています」と発表しています。

その2にて、大阪・福岡・沖縄のホテルを確認すると共に、このような稼働率・客室単価となると、どの程度ホテルの売買価格が違ってくるのかについて説明していきたいと思います。

 

 

仲田リアルエステート株式会社
Mail:nakata.re@philipinvest.com
代表取締役  仲田 一成 (なかた かずなり)

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