フィリピン_不動産2020年予測_LeeChiu

以前の記事でColliers(コリアーズ)の2020年マーケット予測をご紹介しました(当記事はこちら)。

 

今回は、フィリピンの不動産コンサル会社である「LeeChiu」から出されている2020年第1Qのマーケットレポート(4月2日発表)を見ていきます。

なお全体の内容としては、POGO業がフィリピン不動産に与えるた好影響を分析すると共に、「POGO is our Friend」でありまた中国人旅行者が落とすお金も膨大であるから引き続き中国人に来て貰えるような魅力を見つけましょうと綴っています。

 

オフィスの需給について、この新型コロナウィルスの拡散防止のロックダウンは需要のみならず供給も停止(工事出来ない)されたことから、年を通しての需給は概ね均衡するので大きなマーケット変調は起こらないのではないかと、このコンサル会社は見ています。
(2019年時点オフィス空室率:4.2%)

2020年予測

新規需要:  80万-100万㎡(302,500坪) *2017年実績▲42%

新規供給: 84.2万㎡(254,705坪)       *2020年当初予測▲44%

 

2019年に774,000㎡の新規需要を生み出しトップとなったPOGO業ですが、POGOのフィリピン進出によるオフィス空室率の分析が興味深いので載せておきます。

 

実線が実際の需要供給(空室)を示し、点線が仮にPOGO業がフィリピンに来ていなかった場合の需要と供給(空室)を表しています。

青い需要点線を見ると、POGO業以外からのオフィス需要は大きくは増えず60万㎡前後であることが分かります。一方で赤の供給(空室)点線は、物件の新規供給に伴い供給が増え空室が増大していく事が見て取れます。

空室率で言うと、2019年時点で4.2%の実際の数値に対して、POGO無しだと9.2%まで跳ね上がっていたとLee Chiuは分析しています。

 

 

逆の言い方をしますと、BPOや他の産業が大きくは育っていないと言えるでしょう。

オンラインカジノ業が多くの雇用を生み出しまた将来性が高く魅力あふれる産業でしたら、このPOGO業の誘致に成功したフィリピン政府は国民からも崇められるのでしょうが、実際そうとは言えない現実があります。

中国でギャンブルは違法なので、フィリピンに進出していますがここフィリピンでも違法です。
(日本のパチンコ業と似ているのかもしれません。)

 

 

続いてPOGO業がもたらした住宅市場の好影響を見たいと思います。
(なお、当レポートではコロナ後の住宅市況の分析がありませんでした)

 

下のグラフは、マニラ各地域のコンドミニアムの賃料単価推移を示しています。

 

湾岸地域の上昇率が飛び抜けています。また急激にPOGOオフィスを増やした南部のAlabang(アラバン)がマカティ・BGCを超えたようです。

この上昇率も高さも去ることながら、そもそも賃料の上がる事が殆どない日本から見ると、マクロとして賃料が上がることが驚きです。

 

 

続いて、2008年当時に湾岸地域のプレビルドのコンドミニアムを買っていたら、どのくらい価格が上がり利回りが取れていたかをグラフで示しています。

 

2008年はリーマンショックの年で世界的に景気が悪く、更にフィリピンに不動産投資をしようと考えていた人は少数でしょうが、価格としては85,000ペソ/㎡というのは相場であろうかと思います。

それが3年後の2011年に引き渡された時には、価格が+27,000ペソ/㎡増えて112,000ペソ/㎡となり、賃料:560ペソ/㎡から生み出される取得価格に対するグロス利回りは、7.9%となります。

この物件を2020年まで保有し続けていた場合、賃料は1,760ペソ/㎡と3倍以上に増えたのでグロス利回りは24.8%と驚異的な利回りとなっています。

しかも価格は246,000ペソ/㎡とこちらも取得時の3倍超です。

(*価格も賃料も同程度に上がっているので、2020年に取得してもグロス利回りは8.6%と大きく利回りは下がっていません。賃料が上がるというのが新興国での不動産投資の魅力だと改めて感じます。)

多くの人がフィリピン不動産投資を検討した2015年に買った場合を想定すると、利回りは16.8%、価格は1.95倍になっています。

 

 

以上が今までの価格・賃料推移となります。

では、今後どうなるかですが本日の新聞で、かつて8890ホールディングスの社長をしていた方がコンドミニアム価格は15%~20%程度下がるのではないかと予測しているという記事が載っていました(コリアーズの予測▲15%と近い水準)。

 

彼はプレビルドのコンドミニアムの話をしていますが、中古市場も同様に下落した場合に、上記で見た湾岸地域のコンドミニアムの価格・利回りはどうなるか、検証してみました。

 

下落率   価格(単価)            利回り(賃料据え置き想定)

▲15%:246,000ペソ/㎡ → 209,100ペソ/㎡   8.6%→10.1%

▲20%:246,000ペソ/㎡ → 196,800ペソ/㎡   8.6%→10.7%

 

価格としては2018年当時の水準まで下がる予想で、新たに投資検討される人にとっては魅力的な年となりそうです。

 

仲田リアルエステート株式会社
Mail:nakata.re@philipinvest.com
仲田 一成 (なかた かずなり)

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