コロナで始まりコロナで終わった2020年でした。
昨年3月にロックダウンを行い、その後も引き続き外国人の入国緩和の出来ていないフィリピンにおける2021年の不動産市況はどうなるのか?について、Colliersよりレポートが出されましたので紹介したいと思います。
その前提としてのフィリピンの2021年GDP成長率予測について、各専門機関の発表データを見てみましょう(出典:Colliers)。
(BSP:フィリピン中央銀行、NEDA:National Economic and Development Authority(国家経済開発庁)
単純平均での2021年GDP成長率は7.46%となります。
Colliersは上記の経済成長が
・政府による公共インフラ設備工事(具体的な例はこちら参照)
・交通インフラ部門等へのPHP109 billion (約1兆6,684億円)予算確保
により達成できるのではないかと述べています。
続いて、具体的な各セクター別の2021年予測を見ていきたいと思います。
①オフィス
下のグラフを見るとお分かりの通り、オフィスの需要と供給が拮抗してきたことから空室率は5%前後で推移して来ました。
2020年は、POGO業(オンラインカジノ)の事務所閉鎖が増えた一方でBPO等のアウトソーシング業も閉鎖・減床を行っており、2020年1月~9月までで▲113,000㎡(*需要がマイナスというのが私には理解できません。累積オフィスの需要として「0」以下(退去しかない)になる事はあると思いますが、各年での需要がマイナスになるというのはどういう事でしょうか?)と2019年の同期間の605,600㎡と比べて大きく減少している事から、空室率は4.3%から9.1%へと上昇し、2021年も供給過多が続き空室率は11.6%まで上昇すると予測しています。
大型オフィスの建設には数年の期間を要しますので、景気が悪くなったからといって着工済みの工事を白紙に戻すことは(資金的に)難しい一方で、需要の方は即座・数カ月でにオフィス契約を解除出来てしまうことから、予測できない不景気が来ると一気に空室率が上昇する傾向があります。
なお、賃料は+2%の上昇を見込んでいますが、これは大幅に下落した2020年に対しての増加であり、また空室率が10%を超える借手市場で有ることを考えると、底は着いたがほぼ横ばいとなるのではないかと感じています。
②住宅
当初予測されていた2020年の新規供給は、6,000戸と約60%減少が見込まれています。
2021年も7,270戸と前年比では増加するといえども、コロナ前の供給水準には到底及ばない水準となる見込みです。
それ以上に需要が落ち込むようで、2021年末の空室率は13.5%に達するとColliersは考えています。
住宅部門の回復が2021年夏ごろから始まり2021年は、
価格:+1.7%(2020年:▲13%)
賃料:+2.1%(2020年:▲7.7%)
と僅かではありますが、回復傾向となるという予測が出されています。
なお、ブレビルド案件における320万ペソ(約690万円)以上の高級物件について、2020年はその新規販売割合が89%を占めると共にその売却(Tak-up)割合も85%(昨年同期:72%、過去2年平均は68%)を占めることから、2021年についてもこの高級物件が市況をリードするのではと予測しています。
その理由については記載がありませんが、実体のないビットコインの価格高騰に象徴されるように世界的な金余りを反映して、フィリピンでも高級コンドミニアムに資金が流れてきている一方で、フィリピン実需はコロナ不況で家の購入どころでは無いという2極化の表れなのか、注意して見ていくべきかと感じています。
また前回のColliersの住宅マーケットレポート記事(詳細はこちら)でも掲載しましたが、今後のコンドミニアムの価格推移を占うにはGDPとの相関関係が認められますので、フィリピン経済が今後どう推移していくのかを注視すべきかと思います。
イギリスの調査会社(Centre for Economics and Business Research)が発表している2021年度のWorld Economic League Table(WETL)によると、フィリピンは
2021年~2025年:+6.7%/年
2026年~2035年:+6.5%/年
のGDP成長が見込まれ、2035年に世界経済規模22位の大国になるとの予想が出ています(グラフ出典:Business World)。
RetailとHotelについては、「その2」で報告させて頂きます。
仲田リアルエステート株式会社
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