コロナウィルスの影響_日本のホテルの稼働率&客室単価_2020年3月

2020年3月のJ-REIT保有ホテルの稼働率・客室単価情報が公表されましたので、前回同様に見ていきたいと思います(2月分はこちらをご覧ください_その1 その2

また、3月分の訪日外国人客数並びに彼らの宿泊需要の大きさについては、前回の記事をご参照ください(リンクはこちら)

 

 

さて、本題に入る前に2つの宿泊関連の会社の倒産が入って来ました。

1つ目はファーストキャビンというカプセルホテルを開発&運営する会社が破産手続き開始申し立てをしています。

かつてのカプセルホテルの狭い・汚いというイメージとはかけ離れたものを造っていた会社であり、またホテル宿泊料が高騰する中で手頃な価格で泊まれることで人気を博していました。また個人的にも前職で、当開発会社と京都の店舗をカプセルホテルに出来ないかという事で試算頂いたこともあり、当発表に驚いています。

もう1社は、WBF(ホワイト・ベアー・ファミリー)ホテル&リゾーツ株式会社で、旅行代理店のホワイトベアーのグループ会社として大阪を中心にビジネスホテルの開発&マスターリースによる運営をしていた会社ですが、民事再生法の申請をしたという事です。

報道によると、28施設を展開し(従業員約1000人)ていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で宿泊者数が減り、資金繰りが行き詰まった。負債総額は約160億円と記されています。

この会社は、大阪で多店舗展開をしており自社内競合が発生するのではないかと思えるくらい近接してるホテルがあったという認識があります。またオーナーである不動産ファンド会社に支払うホテル賃料が高く、少しでも稼働率&客室単価が悪化すれば逆ザヤになるのではないかという水準で受託していたいう記憶があります。

 

特に大阪については外国人観光客の宿泊割合が38.2%と全国一高かったことからも、REITが保有する優良ホテルにおいても10%台の厳しい稼働率となっている事から、中小のホテルに至っては殆どお客さんがいない状況かと思います。

 

では、札幌から見ていきます。

 

2019年/2020年 3月   稼働率       客室単価
イビススタイルズ札幌  86.8%→17.8% 7,963円→6,661円
メルキュールホテル札幌 62.2%→16.2%  11,474円 →10,928円
ネストホテル札幌大通  100%→77.9%  7,025円→3,827円

 

2月はさっぽろ雪まつりがありますので、2月と3月との比較において客室単価の下落はあると思いますが、本年は稼働率の下落が凄まじいものとなっています。10%台の稼働率というのは見たことが無いという印象です。
ネストホテルは客室単価を下げて稼働率確保を優先したという事でしょうか。

 

続いて京都です。

 

2019年/2020年 3月          稼働率    客室単価
イビススタイルズ 京都ステーション   96%→25.6% 11,357円→7,981円
ホテルマイステイズ京都四条     94.8%→29.1%  11,996円→6,597円
スマイルホテル京都四条       99.8%→71.6% 9,101円→4,640円

 

桜シーズンの京都で稼働率30%を切ることを誰も予測できなかったのではないでしょうか。
3月前半はまだ外出自粛が緩かったことから、国内客の利用者が見込めての水準かと推測します。

 

続いて、外国人旅行者の人気観光地「大阪」です。

2019年/2020年 3月        稼働率     客室単価
ホリデイ・イン大阪難波    96.5%→11.7%  16,335円→10,466円
なんばオリエンタルホテル 96.0%→14.9%    19,229円 →15,943円
ホテルマイステイズ心斎橋 95.3%→18%  10,960円→ 5,652円

 

ほぼ開店休業と言ってよいでしょう。95%超の稼働率が軒並み10%台へと急減している事が分かります。

好立地の当該ホテルでさえ、この稼働率ですから「ホワイトベアー」の運営するホテル等は、全く宿泊客を取れていなかったのではないかと推測します。

4月に入り更に悪化している事を反映し、ホリデイ・イン大阪難波を保有するジャパンホテルリートより当ホテルを 「2020 年4月 20 日から当面の間」休業するとのニュースが出されています。

4月・5月も外国人は期待出来ない・国内の出張・観光の宿泊需要も期待出来ないとなると、ホテル運営会社としては賃貸借契約書に賃料改定不可となっていたとしてもオーナーに賃料減額交渉する(しないと、破産の可能性)でしょうし、オーナーとしても替わりの運営会社を見つけることは出来ないでしょうから、減賃に応じざるを得ないでしょう。
従って、賃料収入・ホテル売上の減少に伴い収益性に基づき不動産価格が決定するホテルは、今後下がる傾向が高まるものと考えられます。

*このような不景気でしか出てこないような好立地の優良ホテルを狙うプレイヤーが、現在積極的に案件を探しているでしょう。

 

韓国人から人気の高い「福岡」を見ていきます。

 

2019年/2020年 3月        稼働率      客室単価
ザ・ビー福岡                       93.0%→31.9%  9,087円→5,691円
ホテルマイステイズ福岡天神 94.2%→49.6%     9,445円→5,240円
ヴィリエホテル天神             99%  →87.8%   10,483円→4,998円

他地域に比べると、稼働率は検討しているように見えます。しかしながら、客室単価は半分に落ち込んでいます。

シンボル的存在の「キャナルシティ博多」も4月9日から臨時休業となっています。

 

最後に「沖縄」です。

 

2019年/2020年 3月           稼働率      客室単価
ホテル日航アリビラ                       83.2%→45.9%  24,253円→21,687円
オキナワマリオットリゾート&スパ 80.6%→31.9%   16,540円 →18,174円
メルキュールホテル沖縄那覇         80.0%→22.9%     9,148円 → 7,906円

 

3月時点においては、大阪と比べればまだ稼働率・客室単価が維持されている事が読み取れます。しかしながら、4月に入り国内客の減少も加わったためか、オキナワ マリオット リゾート&スパ は、4月 17 日~5月 31 日の期間臨時休館が決まっています。

また沖縄で最も人気のあるホテルの1つであるブセナテラスも、5月31日まで臨時休業しています。

 

稼ぎ時であるゴールデンウィークは自粛により、ホテル利用客が見込めない中で6月は閑散期となります。
また訪日外国人に対するビザ発行は4月末までだったものが5月末までに延長する方針であり、国内の自粛解除後すぐに外国人の入国を認め世論の反感を買うような事は政府としてしたくないでしょうから、6月末まで延長される可能性は十分あります。

7月・8月の客室単価が最も高い時期前までにコロナウィルスが終息し、また訪日外国人も迎えられるような環境となっている事を強く望んでいます。

 

仲田リアルエステート株式会社
Mail:nakata.re@philipinvest.com
仲田 一成 (なかた かずなり)

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